【在宅】血栓の種類もいろいろ?

脳梗塞で右上腕が麻痺してしてしまった在宅患者Aさん(女性、70代後半)。

(患者様)脳梗塞をして右上腕が麻痺していましたが、リハビリでよくなりました。先日も主治医から「万歳」してくださいと言われてすることができました。リハビリの効果が現れました。血栓もいろいろな種類があるのですか?

(私)私は、動脈にできるの白色血栓、静脈にできる赤色血栓と覚えていたのですが、先日光干渉断層法検査(OCT)の勉強会に出席してほかにも種類があることがわかりました。

OCTとは、カテーテルを冠動脈に送り込み、血管の壁に近赤外線を当てます。すると、反射光の強さと時間的な“ずれ”を検知・換算して、オレンジのきれいな血管壁が映しだされます。線維性の細胞と脂質では色の濃淡が異なるので血栓の安定性も判断できます。脂質性プラーク、石灰化プラークなどの種類もあり、冠動脈には白色血栓もあれば赤色血栓もあり、一般化して考えてはいけないと思いました。

(患者様)石灰化とはなんだか硬そうなイメージですね。

(私)とはいえ、血栓の種類と予後には明確な関連はないようです。お薬と食生活、生活習慣でしっかり予防しましょう。

 

 

【在宅医療】先生がつかまらない!転ばぬ先の置き薬

大型連休前、在宅患者Aさんから連絡があった(70代、独居、女性)。

患者 さん
膀胱炎になったと思う。排尿痛がある。痛い。

主治医は休診で携帯にも連絡がつかない。詳細を書くと。。

X月1日:排尿痛を訴える。医師不在のため患者の申し出により、排尿痛の市販薬を届ける。

(2日から4日は祝祭日のためクリニック、薬局は閉局。24時間体制の携帯に患者から特に連絡は来なかった。)

X月5日:排尿痛が収まらないと薬局に連絡。主治医に連絡。往診。診察の結果、シプロキサン(抗生物質)が処方される。

非常時に買えば飲める市販薬。しかし、やはり膀胱炎の場合、抗生物質でないと奏効のない場合もある。主治医に置き薬(主に風邪薬、抗生物質、痛み止め、ニトログリセリン、解熱剤など3日分)の処方を提案する。

【在宅訪問】慢性疾患と急性疾患

在宅患者Aさん(70代、女性、独居)は、足の動きがゆっくりになり(運動緩徐)、足が一歩前に出なくなり、よちよち歩きになり(随意運動の開始ができにくい)、在宅を希望された。現在検査中である。ミーティングで医師が神経変性疾患という言葉を発していた。

神経系に影響を及ぼす主な疾患として、アルツハイマー病、脳性麻痺、うつ病、てんかん、パーキンソン病、統合失調症、脳卒中(脳梗塞、脳出血)、多発性硬化症、脊髄性麻痺がある。この中で解剖学的に変性と認められるもの、機能的でなく器質的(身体組織上)問題がある疾患を神経変性疾患という。例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病である。アルツハイマー病はβアミロイドの脳神経細胞への沈着が一つの原因と考えられ、パーキンソン病は、黒質ニューロンの変性である。図1に変性から細胞死(自殺)に至る過程を示す。

Wikipediaによるとそもそも神経変性疾患に関して普遍的な定義はなかったが、昨今発症機構が分子レベルで解明された結果、関連する蛋白質の構造異常や凝集が神経変性の病態の根底にあり、「蛋白質の蓄積病」という共通メカニズムが存在していることが明らかになったようだ。

神経系障害は時間をかけて神経細胞死(自殺)に至る。前回の記載した脳梗塞は数時間~数日単位で急激に神経細胞が死ぬ急性疾患であった。神経変性疾患は進行性の慢性疾患である。在宅訪問時は慢性と急性を常に留意して患者様に接していきたい。

図1 病的な基底核ニューロンは自殺するか

神経科学 西村書店からの引用

上記の記載は経験上に基づくもので患者様は架空の人物です。

在宅訪問中、家族から病状が変わったと告げられた。さて薬剤師はどうする?-慢性症状と急性症状ー

病気には急性症状と慢性症状がある。私は、当初、”在宅=慢性症状”というイメージが強かった。しかし、在宅を2年行ってきて急性症状で、訪問中に医師に電話をしたことが二回あった。リウマチ脳梗塞。急性疾患でも、抗精神薬を長期服用されている患者様のふるえ(ジスキネジア様ふるえ)や風邪、便秘等の緊急を要しない容態については、薬局に帰ってからケアマネ、医師に連絡した。

在宅で重要なのは、本人や家族の気づきなどによる患者様の急な変化。急性症状である(慢性症状は医師が認識している)。薬剤師は診断行為ができない。救急車を呼ぶのか、家族がタクシーで病院につれていくのか緊急性の程度もわからない。まずは、医師に正確に知らせることが肝要である。

参考までに、今回の症例の報告は現場で、どのようになされるか医師に質問したところ、例えば、「右上腕に脱力あり。圧覚、痛覚、位置覚なし。XX反射なし。XX刺激に対して筋収縮なし。」という回答を得た。

薬剤師は圧覚(押されている感覚)、痛覚(痛いという感覚)、位置覚(位置の感覚)の訓練もなされていないので、このような報告はできない。せいぜい知覚麻痺、口が半分空いているなどの表現が限界であるが、文献で現場でどのように表現されているかを参考にして、医師への連絡が遅れないように、的確に表現する言葉を身につけていきたい。

 

 

 

 

昆布のうまみ成分の放出を抑えるラミクタール(ラモトリギン)

先日、食欲が出なくなり、外出困難になった患者様Aさん(50代、女性)に在宅を頼まれました。Aさんは往診で新しいお薬ラミクタール(ラモトリギン)が処方されました。

(私)新しいお薬が追加されました。

(Aさん)どういうお薬ですか?

(私)気分の変動を落ち着かせるお薬です。脳で興奮を引き起こすグルタミン酸の放出を抑えます。

(Aさん)グルタミン酸って化学調味料の?

(私)昆布のうまみ成分であるグルタミン酸です。日本人の池田菊苗が見つけたことで有名ですよね。グルタミン酸はアミノ酸をつくる重要な栄養成分であると同時に重要な脳の興奮性神経伝達物質なのです。このお薬は脳でグルタミン酸の放出を抑えることにより、神経の余計な興奮を抑える働きをします。

(Aさん)グルタミン酸を出さないようにする薬なのですね。しかし、うまみ成分が興奮物質とはおもしろいですね。では、昆布を食べ過ぎたり化学調味料を使いすぎると興奮しやすくなるのですか?一時期、中華料理店症候群といって、グルタミン酸を食べ過ぎると頭痛がするなど問題になったことがありましたが。

(私)中華料理店症候群は、現在では否定されています。そもそも食事から摂取したグルタミン酸は脳には入りません。脳に入るには、血液脳関門という関所のようなものがあるのですが、グルタミン酸は脳への出入りを許可されていないのです。ですから、食事からいくら摂取しても脳にはいかないとされています。脳で使われるグルタミン酸は脳でつくられるのです。例えば脳の関所(血液脳関門)を通ることのできるグルタミンから生成されたりします(引用文献)。

(Aさん)食事からとったグルタミン酸が脳で使われることはないのですね。新しい薬を飲むときは、不安で少し怖いのですが、薬のことがわかると安心してのむことができます。

上記の記載は経験に基づくもので患者様は架空の人物です。

 

せん妄について聞かれました

元アルコール依存症患者の在宅患者Aさんは、毎日ワインを1瓶空けていましたが、徐々にお酒を減らし、今は断酒状態が続いています。

(Aさん)アルコール依存症の人がいきなりアルコールを絶ってはいけないのですか?

(私)急な断酒はせん妄を惹き起こすことがあります。

(Aさん)せん妄ってなんですか?

(私)映画「ルパン三世 カリオストロの城」でルパンが銃で撃たれて深い傷を負った後、一時的に記憶が混乱した場面をご存知ですか?このように大きい手術のあとや入院などの環境の変化でせん妄が起こることが知られています。せん妄とは全身状態の悪化や薬剤などで誘発される軽度の意識障害です。せん妄は幻視、妄想も起こります。幻聴はまれです。

(Aさん)なるほど。手術や入院などの環境の変化でおこるのですね。

(私)せん妄の治療は、環境調整(日中はカーテンを開けて昼夜の区別をつける、入院中は家人につきそってもらうなど)、せん妄を引き起こしやすい薬剤の整理、栄養や貧血などの全身状態の改善をはかることが第一であり、そのうえでお薬を使用すると報告されています。

(Aさん)お薬はどんなものを使うのですか?

(私)治験で有効性が示されているのは抗精神病薬です。2011年までせん妄の適応をもつ薬がなかったのですが、クエチアピン(セロクエル)、ハロペリドール(セレネース)、ペロスピロン(ルーラン)、リスペリドン(リスパダール)が保険適用になりました。ただし、アルコール依存症の方が入院して断酒した時に起こるせん妄(アルコール離脱せん妄)はベンゾジアゼピン系のジアゼパム(セルシン)、ロラゼパム(ワイパックス)を使用するそうです。(アルコールとベンゾジアゼピンの相互作用についてはこちら

(Aさん)せん妄一般とアルコール離脱せん妄は服用する薬がちがうのですね。

引用文献:臨床医学知識、大八木秀和、じほう

 

 

マイスリーとベンザリンの違いは?-鍵穴によって作用が違うんですー

在宅患者Aさんからの質問。

(Aさん)昔、マイスリーを処方されたことがある。今飲んでいるニトラゼパム(以下、ベンザリンという。)とはどう違うの?

(私)どちらともGABA受容体の中のベンゾジアゼピン受容体に結合します。実は、ベンゾジアゼピン受容体にはいろいろな鍵穴があります。マイスリーはベンゾジアゼピン骨格を有さず、ベンゾジアゼピン受容体のうちω(オメガ)1受容体という鍵穴に強く結合します。この鍵穴(ω1受容体)は小脳、嗅球、淡蒼球、大脳皮質第4層などに多く存在しています。ベンゾジアゼピン受容体には、ω2穴受容体と呼ばれる鍵穴もあり、こちらは筋緊張に関与する脊髄や記憶に関与する海馬に多く存在するとされています。そのため、ω1に結合するマイスリーは筋弛緩作用が弱いとされ、ふらつき、転倒リスクの高い高齢者に使われます。

添付文書によるとベンザリンは、てんかん、麻酔前投与、不眠症に効くのに対し、マイスリーは不眠症にしか効きません。マイスリーは超短時間型、ベンザリンは中時間型睡眠薬に分類されます。

(Aさん)鍵穴によって作用がちがうのですね。お薬の説明書にてんかんではないのに抗てんかん薬と書かれたことがありましたが、これで意味が分かりました。

 

 

 

【在宅医療】薬がきちんと働くためにも飲酒はほどほどに

つづき

アルコールが残ったまま運転すると注意力散漫になり危険な話が話題になってますが、薬も効かなくなるという話。

ベンゾジアゼピン系睡眠薬を服用することになり、休肝日をつくることになった元アルコール依存症のAさん。

(Aさん)ところで、アルコールが体からなくなるのにどれくらい時間がかかるの?

(私)警察に以前お勤めされていた患者様に聞いたところ、「ビール1缶350mLでもなくなるのに4時間はかかるね。だから二日酔いでも飲酒運転で引っかかる人はいるよ。アルコールチェッカーというものがネットで売っているから、運転しなくても自分が飲んだとき、どれくらいアルコールが残っているか確かめておくといいよ。」と教えてくれました。二日酔いになるほど飲まず、ほとほどにということでしょうか。

以下は、アルコールが体からなくなるまでのグラフです。引用

厚生労働省の提唱する「21世紀における国民健康づくり運動」では、節度ある適度な飲酒量を1日当たりアルコール20g(ビール中ビン1本か清酒1合)としています。なお、女性やアルコール代謝能の低い人、また65歳以上の高齢者の場合はもう少し減らしたほうがいいようです。

(Aさん)2時間くらいで体からなくなると思っていたよ。

(私)アルコールは、本人が思うより長く体にとどまっています。ベンゾジアゼピン系睡眠薬がきちんと働くためにはアルコールの減量、休肝日が必要と思われます。

(Aさん)お酒をウーロン茶に変えたり工夫してみるよ。

 

【在宅医療】飲酒を続けていいですか?ー耐性ー

つづき

(Aさん)眠剤とアルコールを飲むと眠剤が効かなくなってくるって本当ですか?

(私)今回出された眠剤(ベンゾジアゼピン系)とアルコールは前回の図のように作用点が近いので増強されることもありますし、飲み続けていると、耐性ができて効きが悪くなるという報告もあります。

(Aさん)ずっとアルコールが体内にあることは、似た作用点を持つ薬が効きづらくなるということですね。休肝日をつくって体にアルコールがない状態にすることの重要性がわかりました。

カリウムが高いのにどうしてカルシウムをのむの?―カリメート散ー

糖尿病腎症でカリウム値の高かった患者様(70代、女性)にカリメート散が処方されました。

(患者様)今日はカリウム値が高くて。

(私)カルシウムのお薬が出ています。

(患者様)えっ!カリウムが高いのにどうしてカルシウムをのむの?

(私)カルシウムとカリウムを交換するお薬だからです。

一見、カルシウムとカリウムは繋がりませんが、同じく陽イオンであり、ミネラルです。

消化管内にはいろいろな陽イオンが存在していますが、消化管を進むにしたがってカリウムイオン濃度は上昇し、大腸(遠位結腸)で最大になります

慢性腎臓病患者におけるリン・カリウム管理、アステラス(株)より引用

カリメート散はポリスチレンスルホン酸カルシウム(以下、Ps-Caという)というイオン交換樹脂です。Ps-Caは、経口投与により消化・吸収されることなく、結腸で、Ps-Caのカルシウムイオンと腸管内のカリウムイオンが交換され、糞便中に排泄されます。

このようにカリメート散は結腸内のカリウムを吸収して糞瓶中に排泄することで、体内のカリウム量を抑えることができるのです。

さらに、血中のカリウムは腎臓だけでなく大腸からも排出されることが知られていますが、慢性腎臓病の患者様では腎臓からのカリウム排出が低下するため、糞中へカリウム排泄が増大することが知られており、(http://www.yyokota.net/training-site/mineral4.html)、大腸でのカリウム量の調整が重要になってきます。

注意点としては、カリウムイオンと交換されることで血中のカルシウム濃度が高くなってしまうので、過量投与を防ぐため、医師によって血清カルシウム濃度が確認されながら投与されることです(添付文書より)。

ここで素朴な疑問がわきました。

「カリウムは大部分が小腸から吸収される。なぜ小腸ではなくあえて大腸からの吸収を阻害するのか?」

興和様にお聞きしたところ、「小腸ではカリウム以外の陽イオンが多いのでイオン交換ができない。大腸はカリウムイオンの濃度が高いので交換ができる。」との回答が返ってきました。なるほど、イオン交換は濃度が重要なのですね。

(注)イオン交換の反応は可逆的におこります。カルシウムのほうがカリウムより樹脂への選択性は高いですが、高濃度に存在するイオンと結合することで平衡が成り立っています。アーガメイト、ケイキサレートも同じ作用機序です。

上記の記載は私の経験によるもので患者様は架空の人物です。