補遺 低アルブミン血症

前回、「持続時間が長いインスリン製剤のうち、脂肪酸をつけたインスリン(トレシーバ、レベミル)は皮下組織中のアルブミンとくっつくことで血流にのる前に皮下に長い時間とどまっている。しかし、血流にのっかったら、普通のインスリンと同じ持続時間である。よって低アルブミン血症患者でも不安定ではない。」と記載した。
低アルブミン血症って何?
アルブミンは薬物や脂肪酸、ホルモンと結合して体の必要な組織に運搬する働きをしている。アルブミンは肝臓でつくられるのだが、肝硬変など、肝臓に障害が生じるとつくられにくくなり低アルブミン血症となる。
そこで、臨床医に肝障害と糖尿病との関連について聞いてみた。
回答は「関連する症例は少ない」とのこと。
でも興味深い話を聞いた。
① 低アルブミン血症になると入院となるので、糖尿病になったとしても病院で血糖管理がなされているので持効性インスリン製剤はあまり使われない。
② 今のお年寄りで糖尿病の方は、昭和の企業戦士だった方が多く、食事を残してはいけないとしつけられたり、生活習慣が仕事で乱れていて大食いしていたことがある。そういう方は肝臓が強い。
とのこと。
 参考までに肝機能障害の評価方法を調べてみた。
肝障害の評価方法として肝機能予備能がある。予備能とは肝臓の残された機能がどの程度かを表わし、評価法には「肝障害度」や「Child-Pugh分類」などの基準がある。肝硬変や肝細胞がんの患者がどの程度の治療に耐えられるかという肝臓の予備能力の指標となり、治療方針を決める上で重要である。

消化器科では、様々な指標・分類が使われます。
その中でも、肝障害度を評価するスコア、
Child-Pugh分類(チャイルドピュー分類)があります。
臨床的には肝硬変の程度を表し、肝癌治療などの目安にもなる
【評価項目】
①脳症
1点:脳症なし
2点:軽度脳症あり
3点:時々昏睡
②腹水
1点:腹水なし
2点:少量の腹水あり
3点:中等寮

③Bil(mg/dl):ビリルビン
1点:<2
2点:2~3
3点:3<

④Alb(g/dl):アルブミン
1点:3.5<
2点:2.8~3.5
3点:<2.8

⑤PT(秒)(%)
1点:1~4秒 80%<
2点:4~6秒 50%~80%
3点:6秒< <50%

GradeA(5~6点)
GradeB(7~9点)
GradeC(10~15点)

の3段階で評価されます。

スコアが8~9点の場合には1年以内に死亡する例が多く、
10点以上になるとその予後は約6ヶ月となります。
研修医マニュアルhttp://resident.weblog.to/archives/35755275.html
より引用。


肝炎、肝硬変の指標

在宅訪問で伺っている患者さんに A さんという方がいる。Aさんは、80代の男性で、アルコール性肝炎から肝硬変、肝がんとなり、部分切除手術を受けたことがある。経過観察を続けているが、幸いにも今のところ、再発はみつかっていない。Aさんは、若い頃、横浜港で働く遠洋漁業の漁師だった。戦後の高度経済成長を担った方であった。しかし、排他的経済水域(200海里)が推奨され始めた頃から、次第に遠洋に行く機会が減っていった。邪推かもしれないが、仕事への情熱が行き場を失い、その寂しさから、ついついアルコールを口にすることが多くなっていったのではないかと思われる。

Aさんに薬を渡すたびに、血液検査の結果はいかがですか? 肝機能を表す値ALT、AST、γ-GTPの値は良好ですか? などと質問をしていた。ところが、Aさんから、「再発やがんはCTやMRIでモニタリングしている。血液検査では何もわからないんだよ」と逆に説明を受けてしまった。

私は、血液検査で肝がんのモニタリングができると思っていたが、そうではないらしい。国立がんセンターのホームページに行く。「肝がんが発生しても通常の肝機能検査(一般の血液検査)に変化が現れないことが多く、また、自覚症状が無いことも少なくありません」。Aさんのおっしゃる通りだった。がんの進行は血液検査ではわからない。

基幹病院の処方箋に血液検査の結果が表示されることが多くなった。また、患者様の厚意で検査結果を見せていただけることもある。検査の値は、上記のように病態と関係ない場合もある。しかし、薬剤師として、血液検査でどこまでわかるか知っておくことは重要であり(例えば、ALT,AST上昇は一概に肝臓の炎症というのではなく、ALTは胆のうの炎症も含まれるなど)、検査の本当の意味を理解して患者に接していきたい。

参考までに、肝炎と肝硬変と血液検査の関係について調べてみた。(痛い思いをして血をぬかれたのに、何もわからないなんて、あんまりだ!という気持ちもあり)

【肝炎】
1、 ウイルス性肝炎( AST, ALT上昇)
2、 アルコール性肝炎(AST, GTP が上昇、AST/ALT 比は1.0以上)
3、 非アルコール性脂肪性肝炎(別名 NASH, AST, GTPが軽微に上昇。AST/ALT比は1.0以下)
4、 薬剤性肝炎(AST, GTPが上昇)
5、 自己免疫性肝炎
6、 原発性胆汁性胆管炎
AST,ALTの違いは障害を受けている病巣の違いである。
ASTは心筋、赤血球、骨格筋の障害でも上昇する。
ALTは他の臓器にあまり含まれていないためその血液中の濃度は肝障害を反映。胆石でも高くなる。肝障害、胆のう障害の目安になる。

AST/ALT 比は1.0以上:アルコール性肝炎は肝臓以外の組織(筋、赤血球、骨格筋)からも漏れる割合が多い。
AST/ALT比は1.0以下:非アルコール性脂肪性肝炎は肝臓からもれる割合が多い。胆石指標にも使われる。

【肝硬変】
肝硬変まで進行すると肝炎自体は沈静化するため、ALT, ASTともあまり上がらなくなる。なぜなら、ALT, AST は、正確には「肝臓の機能」を表すというよりも「肝炎の程度や肝細胞自体の異常」を表しているからだ。

ところで、肝臓は、代謝・解毒・胆汁の生産などをおこなう臓器だ。正常組織が繊維化された肝硬変では、残された肝細胞の機能そのものに異常はないが、肝臓全体で処理できる能力が量的に落ちている病態が考えられる。この能力(=予備能、というらしい)を表す指標が肝硬変の重症度の指標の一つになる。

肝硬変の指標は、以下のとおりになる。
・赤血球・白血球・血小板などが減少しているか
→脾臓の機能が亢進(強くなりすぎる)ことで、これらの3つが壊れる。

・総ビリルビンの上昇が見られるか
→肝臓に胆汁がうっ滞(胆汁の流れが疎外されている状態)してしまうことによる。

・プロトロンビン時間(PT)の延長・Alb(アルブミン)低下・ChE(コリンエステラーゼ)低下が見られるか
→肝臓の機能が低下し、タンパク質の産生が落ちることによる。