かくれ高血糖にご用心!!

健康診断ではわからないかくれ高血糖(食後高血糖)はなぜ危い?

糖尿病診療ガイドライン2016によると

HbA1c6.9%未満であれば、細小血管障害(糖尿病網膜症、糖尿病腎症、糖尿病神経障害)が防げる。

しかし、大血管障害(脳梗塞、心筋梗塞、動脈硬化)は食後高血糖だけが高い段階から進展するリスクが高い。

膵臓を一部摘出した室井佑月さんがヨミドクターで「毎朝決まった時間に血糖値をチェックするようになって、面白いことに気付いた。前の晩の食事や過ごし方で、血糖値が予測できるのだ。と例えば、夕食でお酒を飲んで、白米や麺などの炭水化物を控えた場合は100(血液1デシ・リットルあたりブドウ糖100ミリ・グラム)前後になる。お酒を飲まず、しっかり食事をとると130くらい。深夜までだらだらとチョコレートをつまんだり、ラーメンを食べたりしたときは160以上になることもある。」とおっしゃっていました。

私も、昼ごはんを食べて、お菓子やクッキーを食べると上記のように160を超える。朝食、夕食にスープやみそ汁と飲むと上記のとおり150以下に収まるのです。

ガイドラインではBMIに合わせて体重を1キロ、2キロでも減らすと有益と書いてありました。

やはり日頃の節制と生活習慣が重要ですね。

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【糖尿病新薬オゼンピック皮下注の勉強会に参加しました】

糖尿病新薬オゼンピック皮下注(セマグルチド)の勉強会に参加しました。

糖尿病のお薬には注射剤と錠剤があります。注射剤は組成がタンパクで腸管から吸収されないため、皮下注射されます。注射剤には、①インスリンアナログ製剤1)②インクレチン(インスリン分泌ホルモン、以下、GLP-1という。)製剤の2種類あります。オゼンピックは、後者に属します。食事をとると下図のようにホルモンGLP -1が分泌されインスリンが出されます。オゼックスはGLP-1を改変させたものです。

オゼンピックは既存のビクトーザ(GLP-1+パルミチン酸、1日1回皮下投与)の投与間隔を持続させ、週1回皮下投与としたものです。同じく週1回の既存薬トルリシティ2)(GLP-1+ヒト抗体)と比較し、体重減少効果が強いのが利点です。

持続化のメカニズムについては以下の通りです。①長鎖脂肪酸によるアルブミン結合の増強により半減期を遅らせます。②GLP-1は下図のようにDPP4で分解されます。オゼンピックはDPP4での分解が起きにくくなっています(詳細はインタビューフォーム参照)。

1)インスリン製剤トレシーバはなぜランタスの倍の時間効くの?

2)糖尿病注射トルリシティはなぜ1週間効くの?

薬局で一番売れているのは飴ーその2-

患者様からの質問。

患者様「ノンシュガーって言っても還元水飴と書いているものはお砂糖が入っているんでしょう?」

私「還元水飴とは、水飴という食品に水素を加えて結合させてできた糖アルコールという化合物で、胃や腸で消化・吸収されにくい糖質です。砂糖などに比べてカロリーが約1/2~2/3です。また、この飴にはグルコースが入っていないので血糖の上昇が緩やかです。糖尿の患者様にはおすすめですが、カロリーがゼロではないので食べ過ぎに注意です。」

患者様「糖にはほかにどんな種類があるのですか?」

私「糖は、単糖類、少糖類、多糖類に分類されます。単糖類は、グルコース、フルクトース、ガラクトースなどがあります。単糖が二個つくと二糖類になります。例えば、グルコースとフルクトースがくっつくとショ糖、グルコースとガラクトースがくっつくと乳糖になります。それがだんだん大きくなり、グルコースがたくさんくっつくと多糖類、例えば澱粉やグリコーゲンになります。消化液で分解されて小腸から吸収されるのは、単糖のグルコース、ガラクトース、フルクトースだけです。そして主要な栄養物質になるのはグルコースだけです。」

患者様「他の二つは栄養にならないのですか?」

私「どちらも栄養分にはなりますが、グルコースと違って、インスリンの分泌に影響しません。ガラクトースはほとんどが肝臓に入り、グリコーゲンの合成に使用されます。フルクトースは、肝臓でグルコースの代謝経路の中間代謝物に変換されます。注1

患者様「グルコースは燃焼することでエネルギー源になると聞きました注2。ガラクトース、フルクトースはその過程の中間体の役割も果たしているのですね。それでノンシュガー飴よりも普通の飴を舐めるとより元気になるのですね。」

栄養学における最近の話題からの要約

大塚製薬工業(株)栄養学の基礎知識からの抜粋

注1:ガラクトースはほとんどが肝臓に入り、ガラクトース1リン酸からUDP-グルコースと変換され、グリコーゲンの合成に使用されます。少量のガラクトースは細胞膜や血清中の糖タンパク質や糖脂質の糖鎖部分の合成に利用されます。フルクトースは、肝臓で解糖系の中間代謝物に変換されます。また、脂肪酸合成のためのα―グリセロン酸に代謝されます。小腸から吸収されるグルコースが非常に少ない場合、肝臓でグルコースの生成に利用されます。

注2:グルコースは呼吸で取り込んだ酸素と反応して、二酸化炭素と水とエネルギーに変換され、エネルギーはATP,NADHという形で蓄えられます。

薬局で一番売れているのは飴

「口が乾燥してカラオケが歌えない。」、歌を生業とされている方から、「唾液の分泌が悪くて飴を舐めている。いい薬はないか?」なんて相談を受ける。

緊張すると交感神経が優位になり、だれでも喉がかわく。その作用を応用した副交感神経刺激薬のサラジェン、エボザック、人口唾液サリベートエアゾルなどがあるが、シェーグレン症候群など適応が決まっているので処方は難しい。薬は副作用があるから、その程度なら飴や水で善処してという流れだろう。

結局、ジェルタイプの「バイオティーン」やお手頃価格の「うるおいキャンディー(ノンシュガー)」を勧めることになる。後者をなめてみると確かに話すのも大変というほど唾液が出てくる。成分は普通のノンシュガー飴と同じく、清涼感の出るキシリトールや還元水飴などの糖アルコールである。唾液を出す物質とは何か?アサヒグループ食品様に聞いてみた。すると、形が凸凹しているので、舌が刺激されることで唾液が出るとの回答。刺激って重要なんですね。

口の乾燥以外でも栄養補給に飴を買われる方もいる。人血は重量にして約0.10%のグルコースを含んでいる(約0.16%に増大すると腎臓で除去され尿中に排泄される)。主要な栄養源であるグルコースが欠けると低血糖になり、ふるえなどが生じる。糖尿の薬をのんでいる患者様が低血糖予防で飴を買われることもある。グルコース以外の糖は、カロリーにはなるが、血糖にならないのでノンシュガーは薦めない。

のどの痛み、会議中にねむくならないように飴を忍ばせる会社員、空腹時、眠気の応急処置、ダイエットなど、飴はなかなか侮れないのである。つづく。

血糖の話の続き~患者様からの質問~

(質問1)糖尿病になると体の中でどういうことが起こっているの?

(回答) 高校の教科書にこんな問題がありました。

生物基礎、数研出版より抜粋

考察1:インスリン

考察2:健康な人は、食事をした後など血中のグルコ―ス量が増加すると膵臓の細胞が刺激され、血中にインスリンが分泌される。インスリン濃度が増大すると数分以内に、脂肪細胞、筋細胞のグルコースの取り込みが増加し、血中グルコース(以下、血糖という。)量が低下する。

患者Aは、食事をしたのにインスリンが分泌されないので血糖値が上がりっぱなしである。しかし、血糖値は食後1時間以降にゆるやかながら低下することから、糖を受け取る側(脂肪細胞、筋細胞での糖の取り込み)は正常だが、主にインスリンの出方に問題があるため糖尿病になったと考えられる。一方、患者Bは、食事前から血糖値が高く、これに反応したためかインスリンの分泌が食事前であっても高い。食事刺激に反応してインスリンの分泌は高まるが、血糖値はわずかに(≒10mg/100mL)低下した程度である。これらのことから、インスリンの出方は正常であるものの、糖を受け取る側(脂肪細胞、筋細胞での糖の取り込み)に問題があるため、糖尿病になったと思われる。

(質問2)HbA1cとは何ですか?

糖(グルコース)は、反応性が高く、タンパク質と結合しやすい。HbA1cとは、ヘモグロビンに糖が結合したものである。血中に長くとどまるため長期にわたる血糖のモニターとして使われている。下記に生成のメカニズムを示す。

引用はこちら

(質問3)糖がなんの悪さをするの?

(回答)糖尿病においては、糖が尿に出ること自体は問題ではなく、血液中の高血糖によって引き起こされる眼や腎臓の血管障害などの合併症が問題になるのである。原因は複数あると考えられている。

糖(グルコース)は、質問2の回答にも記載したが、反応性が高くタンパク質と結合しやすい(糖化反応)。結合してできた化合物を終末糖化産物(AGE)という。AGEsという名称は、あくまでも糖化反応による生成物の総称であり、一定の構造を示す化合物ではなく、現在まで様々な構造物質が解明されている。さまざまなAGEsが、毛細血管を傷つけ、目で進行すると失明に、腎臓なら人工透析、足なら末端まで血液がいかないため、足が壊死し切断になる。

(質問4)糖尿病では糖だけが細胞に取り込まれなくなるの?

(回答)糖だけが取り込まれなくなるわけではない。脂質も取り込まれなくなり、善玉コレステロールが減ったり、悪玉コレステロールが増え、脂質異常が進む。これが血流を悪くし、心筋梗塞などの冠動脈の病気を引き起こす。


補遺 低アルブミン血症

前回、「持続時間が長いインスリン製剤のうち、脂肪酸をつけたインスリン(トレシーバ、レベミル)は皮下組織中のアルブミンとくっつくことで血流にのる前に皮下に長い時間とどまっている。しかし、血流にのっかったら、普通のインスリンと同じ持続時間である。よって低アルブミン血症患者でも不安定ではない。」と記載した。
低アルブミン血症って何?
アルブミンは薬物や脂肪酸、ホルモンと結合して体の必要な組織に運搬する働きをしている。アルブミンは肝臓でつくられるのだが、肝硬変など、肝臓に障害が生じるとつくられにくくなり低アルブミン血症となる。
そこで、臨床医に肝障害と糖尿病との関連について聞いてみた。
回答は「関連する症例は少ない」とのこと。
でも興味深い話を聞いた。
① 低アルブミン血症になると入院となるので、糖尿病になったとしても病院で血糖管理がなされているので持効性インスリン製剤はあまり使われない。
② 今のお年寄りで糖尿病の方は、昭和の企業戦士だった方が多く、食事を残してはいけないとしつけられたり、生活習慣が仕事で乱れていて大食いしていたことがある。そういう方は肝臓が強い。
とのこと。
 参考までに肝機能障害の評価方法を調べてみた。
肝障害の評価方法として肝機能予備能がある。予備能とは肝臓の残された機能がどの程度かを表わし、評価法には「肝障害度」や「Child-Pugh分類」などの基準がある。肝硬変や肝細胞がんの患者がどの程度の治療に耐えられるかという肝臓の予備能力の指標となり、治療方針を決める上で重要である。

消化器科では、様々な指標・分類が使われます。
その中でも、肝障害度を評価するスコア、
Child-Pugh分類(チャイルドピュー分類)があります。
臨床的には肝硬変の程度を表し、肝癌治療などの目安にもなる
【評価項目】
①脳症
1点:脳症なし
2点:軽度脳症あり
3点:時々昏睡
②腹水
1点:腹水なし
2点:少量の腹水あり
3点:中等寮

③Bil(mg/dl):ビリルビン
1点:<2
2点:2~3
3点:3<

④Alb(g/dl):アルブミン
1点:3.5<
2点:2.8~3.5
3点:<2.8

⑤PT(秒)(%)
1点:1~4秒 80%<
2点:4~6秒 50%~80%
3点:6秒< <50%

GradeA(5~6点)
GradeB(7~9点)
GradeC(10~15点)

の3段階で評価されます。

スコアが8~9点の場合には1年以内に死亡する例が多く、
10点以上になるとその予後は約6ヶ月となります。
研修医マニュアルhttp://resident.weblog.to/archives/35755275.html
より引用。


【患者様からの質問】インスリン製剤トレシーバはなぜランタスの倍の時間効くの?

 40年近く会社に奉職され、定年後は第二の人生でお忙しい患者様Aさん。元リーダーだけあって「この方の下だったら働いてみたいな。」と思わせる半面、「Aさんは人の話聞かないから。」と主治医に苦笑いされるAさん。糖尿病の薬は忘れがち。時間指定のない以前記載したトルリシティ(以後、注射剤の商品名を示す)とトレシーバ(インスリンデグルデグル)が処方されていた。先日、血糖値が安定しないのか、トレシーバからランタス(インスリングラルギン)に変更がなされた。
(質問)トレシーバからランタスに変更になったけど、どう違うの?
(回答)トレシーバの持続時間は、42時間超。ランタスは24時間。トレシーバは注射し忘れた場合でも回復できる。
(質問)トレシーバはなぜランタスの倍の時間効くの?
答えられなかったので調べてみた。
 まずは参考までにインスリン吸収の模式図を下に示す。インスリンは高濃度で6量体になりたがる。皮下組織で希釈されることで分子量の小さい単量体になって、毛細血管から血中に吸収される。 
 トレシーバは、下記に示すように、皮下組織中で6量体インスリンが数珠つなぎになる構造を持つ。そして徐々に血中に単量体として吸収される。さらにインスリンに脂肪酸がくっついている。皮下組織中のアルブミンと脂肪酸がくっつくことにより、血管への吸収遅延を起こさせる(下図参照)。よって42時間持続されるのである。インスリンは、血液中のアルブミンの数万分の一しか結合しないため、低アルブミン血症患者には影響しない。
 それに対しランタスは、通常酸性のインスリンに塩基性アミノ基を置換し、中性分子にすることにより血液中で難溶性にする。

栗田卓也, インスリン製剤の変遷をたどる, 株式会社メディカルジャーナル社 からの引用


普通のインスリンと48時間作用が持続するトレシーバの違い


血糖値スパイクモデル in vitro

「血糖値スパイク」の続き。

この手の健康系の特集番組は、その「科学的」根拠としてよく基礎的な論文が引き合いに出される。某放送局の番組は実際に視聴したわけではないので、ぱっと調べることはできず。その代わりといってはなんだが、海外サイトで根拠としていた論文を読んでみた。

これ

んー (-_-)

これは根拠になっていないような。。。(´・ω・)

せっかくなので紹介しておこう。

たぶん、ポイントは以下の図。

【かなり簡略化した恣意的要約】膵臓 β 細胞を 2 群に分け、 in vitro (試験管内で、というような意味)でそれぞれグルコース濃度 0.8mM と 16.0mM が含まれた培養液で継代培養した。この 2 グループのインスリン産生能力を時間を追ってプロットしたものが上の図。0.8mM の群のインスリン産生能力が落ちないのに対して、 16.0 mM の群(ピンク。高血糖条件下ということなのでしょう)では低下した。また、高血糖群を通常血糖下に戻すと、そのタイミングが早ければインスリン産生能力は回復した(ポイント A, B 。回復どころかオーバーシュートしてますが)。一方、そのタイミングが遅いと産生能力は上向くものの、正常血糖条件下で培養した細胞群の産生能力にも及ばない(ポイント C)。

といったところでしょうか。論文はこの後もあるのだが、正直、ここまで読んだ時点で、読むのをやめた。

いくらなんでも、これは「血糖値スパイク危険説」の根拠にはならないでしょう。

この図が言っているのは「高血糖環境下では、膵臓 β 細胞のインスリン産生能が抑制される。正常血糖環境に戻すと回復するが、高血糖暴露が十分に長いと不可逆的な損傷を受ける」ということではないか? それって今まで散々言われてきたことではないか? グラフの横軸は「時間」としたが、正確には増殖した「代」の積み重ねで、「血糖値スパイク」が想定しているような高血糖暴露時間(おおむね 2 時間以内)のタイムオーダーではない。たぶん、根拠となるのは、「2 時間程度の高血糖暴露が、1 日あたり X 回繰り返され、それが Y 日間続くと、膵臓 β 細胞のインスリン産生能力は低下する」ということや「(そのような条件下では)血管内皮細胞は不可逆的に障害される」ことを示すデータだ。

私は、この手の分野は専門でもなんでもない。だから、この論文の妥当性までは評価できないし、この論文より適当な論文が今ではパブリッシュされているのかもしれない。だが、これが根拠としては不十分だということくらいはわかる。ぱっと見小難しい論文をひっぱってきて、それらしい雰囲気の小道具として使うというのは、この時代になってちょっとどうなのかと思う。

 

血糖値スパイクの謎

HP 制作会社の担当者が言うには、本ブログは最近糖尿病関連で訪れる人が多いらしい。具体的には「トルリシティ 糖尿病」や「DDP-4 インクレチン」や「2 型糖尿病 血糖値スパイク」といったワードの検索結果を経由して、とのことだ。。。ん? 血糖値スパイク、なんだそれ?

調べてみると、なんのことはない以前から「隠れ糖尿病」・「食後高血糖」・「グルコーススパイク」として知られていた病態のことだ。どうやら某放送局の特集番組が、この病態の啓蒙?のためにつくった言葉のようだ。ネーミングのセンス自体はいいと思う。(なお、「ペットボトル症候群」をこれに含めているサイトもあるようだが、私の理解ではこれは違う。ペットボトル症候群は、ペットボトル系の清涼飲料水を飲んだことがきっかけにおこる「糖尿病性高血糖」だろう。血糖値の大きさ・高血糖持続時間が「血糖値スパイク」とは全然違う)

で、件の「血糖値スパイク」だが、以前に「なぜ、高血糖がまずいのか?」という説明で「通常の人でも食後数時間は高血糖の状態になることはあります。ですが、通常の食生活をしている人が重篤な疾患になるかというとそういうことはありません。」とかなりはっきりと書いたが、いや、そうではない、その「食後数時間は高血糖の状態」というのが「血糖値スパイク」で、将来的に「重篤な疾患」につながるかなり危険な状態なのだ、という考え方だ。この考え方を普及させる目的で、啓蒙・注意喚起の番組がつくられたという流れのようだ。さらに言えば、その番組ではその対策として「食べる順序(野菜から先に食べましょう、というよくあるアレ)」を奨励していたそうだ。また、巷では「糖質制限食」が話題になっているようだ。

んー、なんだろうな、この流れ。最近わかってきたことが、まるで確定された事実であるかのような報道のされ方。元の疾患よりもその予備群の方が危険であるかのような表現。対策にしても、「食べる順序」は当たり前すぎるし、「糖質制限食」は調べても具体的な献立例は出てこないし‥‥。まるで、不安商ホ、ごほっごほっのような。。。

ところで本ブログでは、これまで個人的な病気体験談のようなものは、なるべく載せないようにしてきた。一般性が担保されない個人的な体験談を押し付けてもしょうがないだろう、と思っていたからだ。だが、今回ばかりはそうもいっていられない。曖昧な形で流布されているものに、正論をふりかざしても、ね 。

実のところ、私は、以前に食後高血糖であったし、その後、我流の治療で(おそらく)治癒した。

食後高血糖は、しばしば「自覚症状がない」と言われているが、私の場合はあった。食後すぐはなんともないのだが、1~2 時間すると多少イライラしだし、感覚異常(皮膚や聴覚が過敏になった)が出現、また、それが気になって仕事に集中できなくなった。もっとも、放置していても、数時間もすると勝手に治ってしまうので、最初の頃は、あまり気にしていなかった。けれど、こういう体験が 2・3 回続くと、さすがに気になってくる。

まず、自分なりに病態を分析してみた。

症状が出るのは、特定の条件下に限られていた。具体的には、遅刻防止のために朝食(よりによって菓子パンとか)をさっと食べたり、昼休みが 30 分程度しかとれなくなったときに麺類などを文字通りかきこんだりした後だ。ここから、まあ、食後高血糖なんだろうなとアタリはついた。10 代や 20 代とちがって基礎代謝も落ちているだろうし、年齢(というか生活状況)に応じた食生活がとれていないのだろう。

次に症状の内容。イライラする、というのは時系列的に考えて低血糖の症状だろう。私は、高血糖になるとそれに反応してインスリンがばんばん出るタイプなのだろう。感覚異常はよくわからなかったが、イライラの後に出ることから考えて、低血糖補正のために分泌される各種ホルモン(グルカゴンだとかコルチゾルだとか)か急激な血糖値の上昇のせいだと思った。

ちなみにこの持論を携えて病院にいったこともある。担当医がいうには「そこまでわかっているのだったら、自力でなんとかしてください」とのこと。なお、HbA1c や OGTT 検査の結果はまったくの正常。なんか、突き離されたような気分にもなったが、救急が主体のまともな病院なら至極当たり前の対応かもしれない。血糖コントロール不良による低血糖や高血糖(糖尿病性ケトアシドーシス・高浸透圧性高血糖)の方がダイレクトに生死に直結する。ええ、なんとかしてみましょう。

では、実際におこなったことで有効だったと思われることを書く。

まず、早食いはやめるようにした。どうしても、という場合には、コンビニなどで売っている携帯ゼリー飲料(ウイ〇ーだとか)で凌ぐ。当時は、それこそ、「糖分控えめ、アミノ酸多め」だとかうってつけの商品も充実していた。ちなみに気になるカロリーは 1 パック 100kcal ほど。1 日に16 パック食してもカロリーを摂りすぎるということはないし、たぶん 2 パックも飲めば、小腹は満たせる。

また、ワンコインレストランをよく利用するようになった。食べる順序が重要、というが、まともなコース料理は、たいていその順序で皿が提供されている。前菜(サラダや各種オードブル)→メイン(魚・肉)→主食(パスタ・ご飯)→デザート(炭水化物の塊)と何の問題もない。しかも美味しい。ただ、毎食毎食コース料理というわけにもいかないから、一皿 500 円の小皿料理に力を入れているような店に入る。これなら、自炊とは無縁の独身男性でも可能だろう。イタリアンであれば、グラスワインをかたむけつつ、カプレーゼ(だとかその手の前菜)→軽い肉料理→ピザ・パスタ→パンナコッタ(とかティラミスとか)の順で頼む。居酒屋であれば、お通し・サラダ→お刺身→焼き鳥→お茶漬け・おにぎり→デザートの順で頼む(というか、意識しないでも普通この順番で食べるだろう、頼まなくてもキャベツがどんと出てくるところもあるし)。

生活習慣でいえば、意識して運動する機会をもうけるようにはした。けれども、早起きしてのジョギング、だとかは長続きしないはずなので、避けた。週末に集中して散歩したり、なるべく遠出してのショッピングを楽しむようにした。また、ヨガなどのゆったりとした動きで、それなりにカロリーを消費する運動に取り組んだ。

理想的にはより厳格な食事療法や運動療法が望ましいのだろうが、私の場合、この程度のことを 2・3 ヶ月実行していたら、あっさり症状はなくなってしまった。

依存症治療の最近の考え方にも通じると思うが、あまりに高い目標を決めて成功・挫折を繰り返すよりは、到達しやすい目標を設定して失敗してもいいから何度もチャレンジしていく方が最終的な結果は良いように思う

「血糖値スパイク」とそれに対する対処としてかなり具体的なことを述べたつもりですが、いかがなものでしょうか?

 

「新しい」糖尿病治療薬

糖尿病シリーズ第三弾。またかと思われるかもしれませんが、薬との絡みが書きたかったので。。。

一般的に言って、糖尿病の治療は、運動療法・食事療法・薬物療法の三つである。薬剤師的には薬物療法にのみ目がいきがちであるが、「2 型」糖尿病が生活習慣と関係していることから考えて運動療法や食事療法の重要さも認識しておきたい。

しかし、責任もって勉強しなければいけないのは、やはり薬物療法だ。特に、最近になって糖尿病治療薬は様変わりしている。従来にない機序に基づく薬が市場に投入されるようになった。これはなんとしてもついていかなくてはならない(信じられないかもしれないは、数年前までは、インスリン製剤の他には、メインを張る糖尿病治療薬は SU 剤やビグアナイド製剤くらいしかなかったのだ)。

機序に意識して、糖尿病治療薬をまとめる。

インスリン‥‥糖尿病ではインスリンが産生されないか不足しているので、インスリンそのものを生体外から補充する。考え方は、わかりやすい。

スルホニルウレア‥‥ SU 剤と表記されることが多い。2 型糖尿病では、膵臓でのインスリン産生能が残されているので、β 細胞を刺激してインスリン分泌を促す。グリメピリドなど。

ビグアナイド‥‥肝臓に作用して糖新生を抑制する。インスリン分泌云々には関係しないので 1 型糖尿病にも使える。食欲抑制効果もあるので肥満を持つ患者に良い適応になる。乳酸アシドーシスに注意が必要。メトホルミン、ブホルミンなど。

ここまでは、古くからある薬だ。インスリンそのものを外部から補充する、残されていたインスリンをこそぎ出す、インスリンとは関係なく肝臓での糖の産生を抑える、とその機序もわかりやすい。この他にもチアゾリジンや α グルコシターゼ阻害薬、グリニドがあるが、ここではその説明は割愛。

時代がくだると糖尿病関係の創薬は目のつけどころがより戦略的になる。

一般的に、糖を経口投与すると経静脈投与時よりも大きなインスリン作用が現れる。この経験的事実から、消化管に由来する何らかのインスリン分泌促進因子の存在が仮定されていた。このような作用を持つ化学物質のうち、特に消化管ホルモンをインクレチンと呼んでいた。インクレチンが 2 型糖尿病治療薬に転用できることは容易に想像できる。

GLP-1 受容体作動薬‥‥GLP-1 は 1980 年にアメリカ毒トカゲの唾液から同定されたインクレチンの一つである。インスリン分泌促進作用の他、胃内容物排出遅延作用もある。リラグルチド(商品名ビクトーザ)、デュラグラチド(商品名トルリシティアテオス)など。GLP-1 はペプチドのため当然経口投与はできない(インスリンと同様に皮下注)。GLP-1 にヒト抗体を結合し腎での排泄を遅延させたものがデュラグラチドである。

DPP-4 阻害薬‥‥生体内では GLP-1 は DPP-4 という酵素により急速に(半減期 1 ~ 2 分)分解される。DPP-4 の活性を阻害すれば、GLP-1 の分解が抑制され、結果としてインスリンの分泌が促進される。シタグリプチン(商品名ジャヌビア)など。

上記二つはインクレチン関連薬ともいわれる。ところで糖尿病患者では尿糖がみられることは前にも触れた。このとき、血液中の糖は、単純に濾し出されるわけではなく、いったん濾し出された後、SGLT2 というトランスポーターで能動的に血液に戻されている。SGLT2 を阻害すれば、血液中の余剰な糖は尿中に排泄されるため、結果として高血糖改善につながる。

SGLT2 阻害薬‥‥機序は上述の通り。腎臓に作用する点はユニーク。本邦では 2014 年に発売された新薬。インスリン云々は機序に関係しないため、 1 型糖尿病にも使える可能性がある。が、評価はまだまだこれからというところだろう。

GLP-1 受容体作動薬であるエキセナチド(バイエッタ)が日本で発売されたのが、2010 年。糖尿病治療薬を取り巻く情況は、ここ十年で大きく様変わりしたものだ。