コレステロールは体に必要なんです その2

細胞は下の図ような膜に覆われている。しかし、これだけでは細胞の内と外で物質のやり取りができない。そこで、細胞の中にいろいろなものが取り込まれるように「秘密の扉」(NHKスペシャルでこう表現されていた)が埋め込まれている。例えば、ナトリウムやカリウムの出入りもこの秘密の扉の開け閉めが決めてとなる。前回、コレステロールは膜の構成成分になると記載したが、コレステロールはこの膜の硬さを決めるのに重要な役割を果たす。しかし好事魔多し。血中にコレステロールが多く存在すると大変なことが起きる。油(コレステロール)がたまる⇒血管が固くなる(動脈硬化)⇒プラークができる⇒プラークが破れて血管の中で血が固まる⇒血管が詰まる(脳梗塞、心筋梗塞)

細胞膜に埋め込まれた秘密の扉

細胞の分子生物学第2版、P.279、KYOIKUSYAからの引用


コレステロールは体にとって必要なんです

何かと目の敵にされているコレステロール。
コレステロールは本当に悪者?
細胞は下の図のようなものでおおわれている。【頭(水に溶ける部分)と足(水に溶けない部分)のある物体(リン脂質分子)】コレステロールはここにはまり込む。

コレステロールは自由に動く足を固定する。要は安定させるのである。頭と足のある物体1個に対してコレステロール1個存在するので、細胞膜にはたくさんのコレステロールが存在する。

左の図はコレステロール。右の図は2個の頭と足の物体に入り込むコレステロール

コレステロールはタンパク質と結合したLDL(悪玉コレステロール)の形をとって血管内を運ばれている。細胞がコレステロールを欲しがると
1. LDLの鍵穴が細胞膜上にできる。
2. コレステロールを含むLDLがカギとしてくっつく。
3. コレステロールだけが細胞膜の中に取り込まれる。
4. 一定の量取り込まれたら、LDLの鍵穴は消失する。

LDLの鍵穴に欠損があると(ヒトの場合、500人に1人の割合)、コレステロールが膜の中に入り込めないため、血中のコレステロールが上昇して動脈がおかゆのようになり(若年性粥状動脈硬化症)、冠動脈疾患で若年期に死亡する例が多い。

コレステロールが必要以上に血中にあると上記のように動脈硬化になり、プラークという普通では存在しないものができてくる。 コレステロールは多すぎるのは困るがゼロになると体が維持できない。ほどほどが良いのである。

細胞の分子生物学第2版、P.279、KYOIKUSYAからの引用


 

パルモディアは転写調節因子としてふるまう

パルモディアの作用に関して模式図をかいてみた。

PPARα は膜ではなく、細胞質内に存在する。リガンドと結合後、核内に移行し、標的遺伝子の特定領域(プロモーター領域のようだ)に結合する。転写調節因子としてふるまい、標的遺伝子がコードする各種酵素の転写をおこなう。

しかし、このままでは従来のフィブラート系薬剤と同様、肝機能障害に関する遺伝子産物も転写してしまう。

 

そこでパルディモア(ペマフィブラート)は、この転写調節因子の立体構造を変化させ、肝機能障害関連遺伝子領域での転写率を下げ、脂質代謝改善関連遺伝子領域での転写率を上げるようにふるまう。(実際には、その他のコファクターも結合し、転写調節因子複合体とでも呼ぶべきものをつくるようです)

狙ったつくったのか、それともたまたま見つけたものかわかりませんが、かなり精巧な働き方をするものだなと思います。

ただし、このような凝ったつくりこみをすると、その反動もあるようで、具体的には、パルモディアの代謝に関連する CYP などの酵素は、他の薬剤と被るものが多く、結果、併用に注意すべき薬剤が従来のフィブラート系薬剤に比べ増えています(シクロスポリン・リファンピシンが併用禁忌。クラリスマイシン・カルバマゼピン・フェノバルビタールなどが併用注意)。

パルモディアそれ自体は安全性の高い薬剤といえそうですが、肺炎を併発し抗菌薬の投与を受ける場合や、他に基礎疾患を持っており薬剤投与を受けている患者に対しては、相互作用のチェックが必要になりそうです。

 

モジュレーターについてもう少し噛み砕いた説明が

パルモディア -薬子的『モジュレーター』解釈-

にあります。参考にしてください。

 

 

モジュレーターって何?【新薬高脂血症薬パルモディア説明会に参加しました。】

新薬高脂血症薬パルモディア説明会に参加した。
まず、既存の薬ベザフィブラートの鍵と鍵穴の説明があった。【鍵穴:PPARα(ペルオキシダーゼ増殖因子受容体)、鍵(リガンドともいう):ベザフィブラート】
「新薬パルモディア(ペマフィブラート)は鍵穴(受容体)に入る鍵(リガンド)ではなく、モジュレーターです。」との興和(株)MRさんの説明がわからず、モジュレーターと鍵はどう違うんですか?と聞いてしまった。

その後、開発部門から模式図をいただいた。モジュレーターとは広義の意味で鍵であるが、生体の特定の機能のみを発現促進するように振舞うリガンドのことをいう。以下の模式図の通り、パルモディアは脂質代謝改善のみの機能を持つ(肝機能障害は従来のフィブラート系薬剤と比べおこりにくくなる)。

なぜ、このようなことができるのだろうか? 従来のフィブラート系薬剤も標的は PPARα で変わらない。

この機構を理解するポイントは、

・PPARα が核内受容体であり、直接 DNA の標的遺伝子部位と結合し他の因子により転写活性の調節を受けている

・ペマフィブラートは PPARα と結合することにより PPARα の立体構造を変化させ、他因子の結合状態を変えることで転写活性を調節している

にあると思う。アロステリック酵素の転写調節因子バージョンといえばわかりやすいか?

あるいは、膜受容体と比較するとわかりやすいかもしれない。『膜受容体とアゴニストの結合→細胞内シグナル伝達→遺伝子産物の産生』のような系では、特定の遺伝子機能だけを発現・促進させるというのは、なかなか難しい。それに対し PPARα + フィブラート は、これ自体が核内に移行し特定の DNA 領域と特異的に直接結合するため、望まない遺伝子産物をつくりだすことがない。さらに、自身の立体構造を変えることで、関連する一連の遺伝子のうち、例えば「脂質代謝に関連する酵素」をコードする遺伝子部位の転写活性を上げることができる。

もちろん、現実的にはこのように図式的・理想的には働いていないだろうし、臨床的な評価もこれからなのだが、薬剤設計自体はかなり工夫されたものではないだろうか。

 

モジュレーターについてもう少し噛み砕いた説明が

パルモディア -薬子的『モジュレーター』解釈-

にあります。参考にしてください。