薬の名前の豆知識

薬には、ブランド名(ブランドネーム)と一般名(ジェネリックネーム)があります。一般名はWHOによって定められた国際一般名(INN)に基づいて命名されます。ブランド名はその薬を初めて作った会社だけが使える名前で、その他の会社は再審査と特許が切れた後、一般名を使って販売します。一般名で売る薬をジェネリック医薬品と言いますが、ジェネリックとはこの一般名generic nameのgeneric”一般的な”という意味にちなんでいるのです。

ブランド名は、①先行品と名称が類似していないこと②商標登録がなされてないことの2項目がクリアできていれば何を付けてもOKです。例えば、武田薬品だと「タケキャブ」、田辺だと「タナトリル」など会社の名前がつくこともあり覚えやすいものもありますが、名前が似ていて覚えにくいものもあります。私は、ミクトノーム(プロピベリン塩酸塩、頻尿治療剤)とミオナール(エペリゾン塩酸塩、筋弛緩薬)が混同しました。しかし、名前の由来を調べたところ、ミオは筋肉(MYO)の接頭語、そしてミクトノームはmicturition、排尿ということがわかり、混同しなくなりました。薬の語源については薬学用語辞典参照。

それに対し、薬の一般名はINNに基づいて命名されるので、ブランド名より系統だっています。従来からある低分子医薬品は、構造式やその基本骨格をもとにして命名されてきました。一方、近年になり開発が活発になっている生物製剤はタンパク質などが有効成分になっているため、構造式からの命名は難しくなります。そこで、以下のような新しいルール、例えば接尾語が使われるようになりました。

ニブ、-nib:リン酸化酵素(kinase)の阻害剤(inhibitor)

マブ、-mab: モノクローナル抗体(monoclonal antibody)

コグ、-cog:凝固因子(coagulation)

例えば

オクト‐oct[ラテン語で8(オクタン) ]+コグ:第XIII(8)凝固因子

ノナ‐nona[ラテン語で9(ノナン) ]+コグ:第IX(9)凝固因子

オクトはオクトパス(たこ、8本足の意味)から8が容易に想像できます。生物製剤の命名法について詳しくはこちらへ。


ジェネリックいかがですか?―錠剤の大きさー

ジェネリックは大きさも会社によってまちまちです。

当薬局の高血圧治療薬アダラートCR20のジェネリックは、A社(ニフェジピンCR20「A」)を取り扱っていましたが、大きさが気になる患者様もいらっしゃり、剤形の小さいB社(ニフェジピンCR20「B」)も取り扱うこととしました。ジェネリック選定にあたっては、先発品と比較し、添付文書上の「適応上の注意」だけでなく、大きさも考慮いたします。

先発品(アダラートCR20)とジェネリック2社(ニフェジピンCR20「A」、ニフェジピンCR20「B」)の写真と直径等の比較を下記に示します。

嚥下困難な患者様にとっては剤形の小さいB社が適当と思われます。 B社の添付文書の「適応上の注意」の項に「内核のフイルムコーティング剤のエチルセルロースは水に不溶のため、・・糞便中にまれに錠剤の形状を残したまま排出されることがある。」の記載があります(ゴーストピルと言われる)。ゴーストピルとは、直訳すると「錠剤の幽霊」ですが、薬の溶け方を調整するための基材がそのまま便中に排泄されたものです。薬の有効成分は体内に吸収され、抜け殻だけが便に出てくるため、ゴーストピルを見つけても薬の効き目には影響ありません。大きさが同じ他社のジェネリックについても調べましたが、他社も「適応上の注意」の項に同様の記載がなされておりました。

ニフェジピンCR錠は、24時間効果が持続する降圧剤です。効果と安全性については、厚労省の折り紙つきですが、効果が持続するための工夫や大きさは、ジェネリック各社に任されております。当薬局ではそれらの特徴を調査して、ジェネリックの導入を進めております。皆様のジェネリックの使用感を教えていただければ、今後の選定に反映させてまいりたいと思います。


 

ジェネリックいかがですか?その2

患者様からよく聞かれる質問です。

(問)どうして先発品は特許が切れているのにジェネリックと同じ値段にならないのですか?

(答)先発品は、特許が切れてもジェネリックと同じ値段にはなりません。これは医薬品に限りません。真珠を例にとってみます。世界で初めて養殖真珠を発明したミキモトの真珠が先発品にあたります。ミキモトの技術を使って真珠を作るのがジェネリック製品です。先発品であるミキモトの真珠は養殖技術の開発にお金がかかっている分、特許が切れてもジェネリックより高いのです。

医薬品の世界も同じです。先発品は長い年月をかけて新薬を開発し、治験や市販後調査をすることが義務づけられています。それに対しジェネリックは生物学的同等性試験 (血中濃度の経時変化が同等)のみで販売することができます。試験が省略されている分、安くなっているのです。

(問)ジェネリックと先発品ではどれくらいお金が違うのですか?

(答)先発品の値段は、厚生労働省が原価計算方式【原価に販売費および一般管理費(ここに研究開発費が含まれる)、営業利益、流通費並びに消費税を加えた額を薬価とする。】により決定します。ジェネリックの値段は、現在は先発品価格×0.5、つまり半額となっています。

 

(問)価格以外にジェネリックと先発品との違いはありますか?

(答)よく、「先発品とジェネリックは同じものだ」という言い方がなされていますが、これは若干誤解を生む表現です。確かに薬の有効成分は化学的にも同一なのですが、薬は有効成分のみでできているわけではありません。有効成分とは関係ない添加物の部分に違いがある場合があります。

この点を利用して剤型に一工夫することもできます。先発品に水なしで飲めるOD錠(口腔内崩壊錠)の剤形がない場合、ジェネリックで OD錠にして販売することが可能です。例えば、降圧剤の先発品ミカルディス錠にはOD錠はありませんが、後発品にはテルミサルタンOD錠があります。これは薬剤の治療選択肢が増えたといってよく、ジェネリック導入によって得られるメリットの一つでしょう。

逆に、添加物や剤型の違いから、先発品とジェネリックで官能評価(味や色味といった人間の感覚的な印象)に違いが出る場合もあります。「ジェネリックに変えたら、なんとなく飲み心地が変わった。どうも落ち着かない。服用に抵抗を覚える」 という情況は十分おこりうることです。大半の場合、これが大きな問題につながることはないと思いますが、「ある程度定期的に服用しているが、服用する場合にはしっかりと効いてほしい薬」の場合(具体的には、頓服で出される睡眠薬などでしょうか)、先発品→ジェネリックに切り替える際、不安を感じるかもしれません。これぞ臨床、というケースですね。そのような場合は、どうかご相談ください。現場に近い薬剤師として、可能な限りの情報を提供したいと思っています。


ジェネリックいかがですか

薬に厳しい90代の患者Aさん。私が「ジェネリック(後発品)いかがですか?」と聞いても先発品と即答されます。先日基幹病院に入院され、お嫁様が退院時の処方箋を持っていらっしゃいました。すると処方箋にはジェネリックの銘柄1)が記載。私達が勝手に先発品に変えることができない旨を申し上げると、「聞かれると絶対に先発品と言いますけど、(お医者様に)出されたものはきちんとのみますから。」と苦笑い。

「後発品と先発品とどう違うのですか?」と聞かれると「添加物は違いますが2)、先発品と同じ治療効果があるものです3)。」「特許が切れているのでお値段がお安くなります。」などと申し上げますが、皆さんやっと診察が終わって、さっさと帰りたい人が大部分。「先生が書いた通りに出してください。」で終わること多数。

こだわりのある人でも、お医者様の処方次第というケースが少なくないのでです。

参考文献等

1)処方箋において薬は①一般名、②ジェネリック銘柄指定、③先発品のどれかで記載される。例えばロキソニンならば以下のとおり。変更不可欄に医師のチェックが入っていない場合、①と③は患者様の同意のもと、ジェネリックに変更できる。

①【般】ロキソプロフェン錠60mg

②ロキソプロフェン錠60mg「AAA」

③ロキソニン錠60mg

2)JAPICブルーブックデータ一覧http://www.bbdb.jp/generic/toppage.aspx

3)医療用医薬品最新品質情報集(ブルーブック)データシート一覧http://www.nihs.go.jp/drug/ecqaged/bluebook/list.html