カリウムが高いのにどうしてカルシウムをのむの?―カリメート散ー

糖尿病腎症でカリウム値の高かった患者様(70代、女性)にカリメート散が処方されました。

(患者様)今日はカリウム値が高くて。

(私)カルシウムのお薬が出ています。

(患者様)えっ!カリウムが高いのにどうしてカルシウムをのむの?

(私)カルシウムとカリウムを交換するお薬だからです。

一見、カルシウムとカリウムは繋がりませんが、同じく陽イオンであり、ミネラルです。

消化管内にはいろいろな陽イオンが存在していますが、消化管を進むにしたがってカリウムイオン濃度は上昇し、大腸(遠位結腸)で最大になります

慢性腎臓病患者におけるリン・カリウム管理、アステラス(株)より引用

カリメート散はポリスチレンスルホン酸カルシウム(以下、Ps-Caという)というイオン交換樹脂です。Ps-Caは、経口投与により消化・吸収されることなく、結腸で、Ps-Caのカルシウムイオンと腸管内のカリウムイオンが交換され、糞便中に排泄されます。

このようにカリメート散は結腸内のカリウムを吸収して糞瓶中に排泄することで、体内のカリウム量を抑えることができるのです。

さらに、血中のカリウムは腎臓だけでなく大腸からも排出されることが知られていますが、慢性腎臓病の患者様では腎臓からのカリウム排出が低下するため、糞中へカリウム排泄が増大することが知られており、(http://www.yyokota.net/training-site/mineral4.html)、大腸でのカリウム量の調整が重要になってきます。

注意点としては、カリウムイオンと交換されることで血中のカルシウム濃度が高くなってしまうので、過量投与を防ぐため、医師によって血清カルシウム濃度が確認されながら投与されることです(添付文書より)。

ここで素朴な疑問がわきました。

「カリウムは大部分が小腸から吸収される。なぜ小腸ではなくあえて大腸からの吸収を阻害するのか?」

興和様にお聞きしたところ、「小腸ではカリウム以外の陽イオンが多いのでイオン交換ができない。大腸はカリウムイオンの濃度が高いので交換ができる。」との回答が返ってきました。なるほど、イオン交換は濃度が重要なのですね。

(注)イオン交換の反応は可逆的におこります。カルシウムのほうがカリウムより樹脂への選択性は高いですが、高濃度に存在するイオンと結合することで平衡が成り立っています。アーガメイト、ケイキサレートも同じ作用機序です。

上記の記載は私の経験によるもので患者様は架空の人物です。

 

【貧血薬ネスプ注射剤の勉強会に参加しました】

貧血薬ネスプ注射剤の勉強会に参加しました。前回、糖尿病腎症の患者様に貧血が多いので因果関係を調べたところ、造血ホルモンであるエリスロポエチン(以下、EPOという。)の産生部位は腎であることがわかったと記載しました。注射剤ですが、在宅医療で医師により投与される患者様もいらっしゃるので参加しました。協和発酵キリン様に糖尿病腎症で貧血の患者様にも奏効があるか質問したところ、奏効があるとの回答が来ました。

EPOは腎臓で産生されるため、透析患者には貧血が大きな合併症となります。既存薬は、血液透析患者において、終身あるいは腎移植まで主に週2~3回の頻度での投与が必須であり、保存期慢性腎臓病または腹膜透析患者では週に1回、または2週に1回この投与を受けるための通院が強いられます。

引用(下図を含む)はこちら

ネスプ注射剤(一般名:ダルベポエチン アルファ)は生物製剤です。以下の図ように、遺伝子工学および糖鎖工学の手法により遺伝子組み換えヒトEPO分子(rHuEPO)に新たにアスパラギン結合型糖鎖を2本(赤で囲った部分)付加した持続型赤血球造血刺激因子製剤です。ネスプは、既存薬と比較し、鍵(ネスプ)と鍵穴(EPOレセプター)の結合親和性は低いですが、造血作用を増強させ、血中滞留時間を延長します。そのため、投与頻度を減らすことができ、貧血改善、患者様のQOL向上、医療事故の低減などが期待されます。

超高齢化社会になり、腎疾患の患者様も増えてまいりました。お薬手帳にエスポ―注射Ⓡ(EPO製剤)と記載している患者様も見受けられるようになりました。薬局とは直接関係のない薬剤ですが、服薬指導の一助となる勉強会でした。


母のカリウム値が高く、娘の薬剤師がびっくりした話-GI療法ー

(母)GI療法(グルコースインスリン療法)の説明もされたよ。なぜカリウムが高いとインスリンを打つの?

(私)・・・・・。調べます。

インスリンにはカリウムイオン取り込み促進作用がある。インスリンを投与することによって血中のカリウムが細胞内に移動し、高カリウム血症の治療ができる。なお、当然ながらインスリンで血糖値も下がってしまうのでグルコースを補充しなければならない。つまりグルコースとインスリンを両方同時に投与する必要があるのでそれぞれの頭文字をとって GI 療法と呼ばれている。GI 療法とは、インスリンを用いてカリウムとグルコースを共に細胞内に取り込む緊急療法である(参考サイトはこちら)。

(母)つまり、GI療法とは、インスリンがメインで、グルコースは低血糖予防ということ?

(私)そのようです。

 

いろいろと調べてみましたが、、、

インスリンに応答してグルコースを取り込むGLUT-4という分子が、グルコースを取り込む際にカリウムも血中から細胞内に取り込む働きがあるところまでは分かりましたが、詳しい作用機構についてはそれ以上わかりませんでした。

参考までに急性期病棟看護師さんの報告にGI療法についての記載がありました。

その後、腎臓の薬を変更され、カリメート散を真面目に飲んだ母のカリウム値は5台に下がったのでした。

 

 

 

 

 

 

なぜカリウムの検査値の上下でそんなに驚くの?

先日、糖尿病で腎臓も悪い私の母(70代)から電話があった。

(母)血液検査でカリウムの値が6を越えていて先生に驚かれた。カリウムが高いとなぜ驚かれるの?痛くもかゆくもないんだけどね。

(私)まずは、カリウムについて調べてみました。

カリウムは、細胞内に多く含まれ、ナトリウムは細胞外に多く含まれます。

(図は生物基礎 数研出版からの引用)。        

細胞膜にはイオンチャネルというイオンのみを通す膜貫通タンパクがあります。ナトリウムカリウムポンプ(Sodium-Potassium Exchange Pump)と呼ばれるイオンチャンネルは、細胞内のナトリウムとカリウムを入れ替える働きをします。ATPのエネルギーを使って積極的にナトリウムを細胞外に汲み出し、同時にカリウムを積極的に細胞内に組み込みます(1開閉で3つのナトリウムが細胞外へ、2つのカリウムが細胞内へ入る)。このポンプの働きによって、カリウムは細胞の内側で濃度が高く、ナトリウムは外側で濃度が高くなるように作られているのです。

(図は生物基礎 数研出版からの引用)。

血清カリウム濃度の小さな変化が重大な臨床症状を生むことがあります。一般に重度の高カリウム血症がみられる場合不整脈の症状がでます。カリウムはもっとも豊富な細胞内陽イオンであり、細胞内浸透圧を決定する主要因子です。そのためカリウムの濃度は、神経伝導および筋(心筋を含む)細胞に影響を及ぼすのです。カリウム濃度の上昇は腎疾患、腎機能に影響する薬剤、カリウムサプリメントの過剰摂取が考えられます(引用 MSDマニュアル 高カリウム血症)。

以上を踏まえて母に説明。

(私)血液中のカリウムが高すぎるのは、コレステロールが高かったとは違う!心停止の危険性もあることなんだよ!

(母)えっ?そうなの?

(私)血液中のカリウム濃度が高くなりすぎると、心室筋が興奮しすぎて心室細動をきたすことがある。すなわち、心臓は、細胞内外をK、Na、Caイオンが出入りしているイオンチャネルの出入りによって、電気が発生して興奮・収縮している。この出入りが崩れるということは、頓死(あっけなく死んでしまうこと)の可能性を伴う極めて危険な状態であり、治療によって速やかに、カリウム値を下げなければならないのだよ!(引用:増田敦子、解剖生理を面白く学ぶ、サイオ出版)

(母)それで先生も驚いていたのか!!

続く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

間質が間質でなくなる日

間質、の対になる言葉は?”を読んだ患者様から質問を受けた。①実質から漏れ出る液体は実質液ではなく間質液でよいか?②肺以外の臓器の間質とは何か?③間質液はリンパ液でよいか?間質液の老廃物はどこに排出されるのか?
① 実質を支える細胞が間質であるので実質から出た液体は間質液である。
② 以下の通り。

③間質液とは、実質または間質細胞から漏れ出た栄養分を運ぶ液体の総称である。間質液を含めて間質という。以下の図のように、間質液はリンパ液に排出され、最終的に静脈に排泄される。

 

https://www.kango-roo.com/sn/k/view/1844からの引用

間質の最新の知見としては、今まで間質(液)は細胞間を埋める空間や単なる結合組織として考えられてきたが、高性能なプロープ型共焦点レーザー顕微鏡(pCLE)によって空間や組織が観察できるようになった。間質が間質でなくなる日が来るかもしれない。

ニューズウィークの記事はこちら

論文はこちら


 

間質、の対になる言葉は?

過去記事の「むくみ」が好評だったようなので、付け足し。

そこで出てきた「間質」という言葉の連想からだと思うが、「間質性肺炎って何ですか?」という質問をいただいた。

んー 、こういうのは質問というのか??? (´Д`)

ゲフィニチブ(イレッサ)の副作用ー間質性肺炎ー空咳

という試験対策用のキーワードの羅列丸暗記で「間質」を理解しているとこういうことになる。ちなみに「間質の対になる言葉は?」と訊いたところ、やはりというべきかわかっていなかったので、たぶんそういうことなのだろう。

間質の対になる言葉は「実質」だ。臓器・組織においてその機能の中心となっている部分が「実質」であり、それ以外の部分はすべて「間質」である。

例えば、肝臓であればその機能の中心は「代謝・解毒」なので、実質は肝細胞そのもの、それ以外の血管内皮細胞・結合組織などはすべて間質である。肺の場合は、その機能の中心は「ガス交換」なので、実質は肺胞腔(肺胞+肺上皮細胞)、間質はそれ以外の肺胞壁モロモロということになる。

ここまでくれば、「間質性肺炎」という言葉の理解はできる。肺炎のうち炎症が生じる場所が主に肺間質であるものを「間質性肺炎」と呼んでいる。実質性肺炎という言い方は聞かないが、これは、実質に炎症がある場合は原因がほぼ細菌性・ウイルス性に限られるので、それぞれ「細菌性肺炎」・「ウイルス性肺炎」と呼んでいる、という事情による。

また、間質性肺炎は、炎症の首座が、(人体「外」環境に直接暴露されているといっていい)肺実質ではなく、間質という人体「内」であることから容易に想像がつくように免疫が関与している場合が多い。(先ほどチェックしたが、ゲフィニチブの副作用による間質性肺炎の機序はいまだに不明なようだ)

なお、間質性肺炎の症状は、息切れ・発熱・咳などであるが、炎症は気管支などには及んでいないため痰などはさほど分泌されず、咳は乾性の空咳になる。

これでキーワードはつながったかな?