漢方は安全か?

薬剤性の間質性肺炎に触れた以上、この話もしておかないと。

薬剤性間質性肺炎の原因薬剤としてはゲフィチ二ブ(イレッサ)が有名だが、もう一つ有名なものに小柴胡湯(しょうさいことう)がある。

調べたら、日本呼吸学会誌さんが症例を公開してくれていた。またしても、、、。本当にありがたい限りですね。

 

【経過概要】66 歳女性。41 歳頃より肝機能障害を指摘され、61歳時、近医にて C 型慢性肝炎と診断され、小柴胡湯の服用を開始。1997(66歳) 年 7 月中旬より、咳嗽・喀痰・発熱が出現。近医にて抗生剤などの治療を受けたが軽快せず、8 月 27 日、K 病院呼吸器科入院。胸部レントゲン写真で両側肺門より抹消に広がる浸潤影、線状影を認め、高解像度 CT にて胸膜に接した air space consolidation、小葉間隔壁の肥厚像を認めた。小柴胡湯を中止、ステロイド治療を開始したところ回復、退院となった。しかし、ステロイド減量中に腹水の増量、発熱、呼吸困難感出現したため、10 月 17 日、再入院となった。抹血検査にて炎症反応上昇、肝逸脱酵素上昇、血小板数減少。胸部レントゲン写真で両肺に広範なスリガラス状影を認め、高解像度 CT にて ground glass opacity を認めた。が、喀痰検査・血液培養に有意な所見なく、間質性肺炎の急性増悪と診断。抗生剤、ウリナスタチンを併用しながら、ステロイドパルス療法施行。呼吸状態の改善はみられたが、肝機能障害は進行し、腹水・黄疸が増強し、再入院 3 週間後に死亡された。剖検にて、病変部にウイルスや真菌はされながったが、肝臓には肝硬変が認められた。

 

間質性肺炎に対しステロイド、だがステロイドは基礎疾患(HCV による肝障害)を増悪させる可能性もある、、、と治療にはかなり苦労したのではないかと思う。報告では、諸々の考察から本症例は「HCV の関与も考えられる潜在していた UIP(特発性間質性肺炎)病変を背景に、小柴胡湯による薬剤性として修飾された肺障害が顕在化し、さらにステロイド減量中にいわゆる急性増悪をきたした」ものとしている。なので、本症例が「小柴胡湯による間質性肺炎」どんぴしゃの症例とは言えないかもしれないが、そこらへんは大目に見てください。

臨床的に注意しておきたい点は、小柴胡湯による肺障害は長期間の投与後においても(上記症例では 5 年)出現する、ということだろう。必要がなくなれば、速やかに投与を中止しなければならないのだ。

ところで、小柴胡湯がなぜ重要なのかといえば、漢方薬による有害事象の初めてのまとまった報告が小柴胡湯によるものだったという歴史的な理由による。

頻度的にはレアなものだが(小柴胡湯を服用して間質性肺炎を発症する頻度は10万人に4人程度)、これらの報告によって「漢方は絶対安全」と言い切れなくなった。具体的な事例の一つくらいには目を通しておきたいところだ。