アルコール依存症と歩行困難

70代男性、独居。以前アルコール依存症で入院されたことがある。その際足が悪くなり先日、当薬局に在宅の依頼をされた(なお、患者様の特定を避けるため、個人情報は適宜変更しております。)。

依存症以来、食欲がなくほとんど食事がとれない。今でも依存症ではないが、お酒はのまれている。栄養補助液とビタミン剤が処方されている。1日1回杖をついてスーパーに行くのが精いっぱい。家から出る際に階段があるので雨の日は外に出られない。

アルコール依存症の患者様に見られる末梢神経障害では、アルコールの過剰な摂取で食事のバランスが崩れたことによる栄養素の欠乏が主な原因として疑う。今回の患者様の歩行困難は、脳の萎縮によるものか、栄養から来るものかわからなかったが、主治医が、ビタミン剤を処方していることからビタミン欠乏による神経障害と推察される。

と、ここまで予習をして主治医に患者様の質問を聞いたところ、歩行困難は、ウェルニッケの疑いという回答が返ってきた。

ウェルニッケ(=ウェルニッケーコルサコフ症候群)とは、チアミン、ビタミンB1の欠如による脳のダメージによって引き起こされる病態で、急性期のウェルニッケ脳症と慢性期のコルサコフ症候群からなる。初期のウェルニッケ脳症ではビタミンB1の投与で症状の改善が期待される。

ウェルニッケ脳症:精神錯乱、筋肉の動きの調和が乱れる、眼を動かす神経の麻痺

コルサコフ症候群:ウェルニッケ脳症が慢性化すると起こる。記憶喪失を含む記憶や学習障害、歩行困難など。

参考までに小脳が萎縮するアルコール性小脳失調症もある。小脳は、バランスをコントロールする部位である。歩行困難、身体の胴の震え、腕や足のぎくしゃくした動き、ろれつが回らない、眼振(眼球が無意識に動くこと)を含む症状が出る。

次回訪問時、主治医の診断を踏まえ、栄養素の欠乏による疾患であることを説明したいと思う。つづく

引用:こちらからの翻訳