ベンゾジアゼピン系薬物受難?の時代に

(卸様)ベンゾジアゼピン受容体作動薬(以下、ベンゾ系という)の保険点数が変更になった1)ため、ロゼレムやベルソムラに移行される傾向が多いようですが、いかがですか?

(私)(心の中)だからこの頃ベルソムラの処方をよく見かけるのか。ベンゾ系ってどんな種類があったっけ?

まずは作用機序の復習をしました。

ベンザリンとマイスリーの違い

ベンゾ系を調べていくうちにジアゼパム換算表があることを知り参考までに整理してみました。

ジアゼパム換算表 *ジアゼパム 5mg に対する等価換算値[mg]

一般名 商品名
エチゾラム デパス 1.5
ゾピクロン アモバン 7.5
ゾルビデム マイスリー 10
トリアゾラム ハルシオン 0.25
ニトラゼパム ベンザリン 5
フルニトラゼパム サイレース 1
フルラゼパム ダルメート 15

(稲垣ら、第18回2006年版向精神薬換算表、臨床精神薬理9(7)1443/1447からの改変)


ジアゼパム等価換算値 [mg] とは

アモバン7.5mgとサイレース2mgが処方されていた場合

アモバン7.5mg 5/7.5X7.5=5

サイレース2mg 2/1X5=10

ベンゾジアゼピン系薬投与量は15mgと計算するようです。

にほんブログ村 病気ブログ 薬・薬剤師へ
にほんブログ村 受験ブログへ
にほんブログ村 受験ブログ 中学受験(サピックス)へ

1)2018年の診療報酬改正で、不安や不眠の症状に対し、12月以上、ベンゾジアゼピン系の抗不安薬・睡眠薬を長期処方している場合の処方料、処方箋料を新設した。それぞれ29点(通常の処方料42点)、40点(通常の処方箋料68点)と低い設定となった。

【補足】ジアゼパム換算がなぜ必要なのかといえば、ある種の研究などで、薬剤と精神症状の関連を統計的手法を使って調べたいとき、ベンゾジアゼピン(BZ)系薬剤投与量を一つの数値で表すことができれば、解析がいくらか簡単になるためです。例えば、BZ系薬物投与量と日中意識レベルの相関を知りたいというような場合です。
また、計算式もジアゼパム換算係数みたいなものを定義しておくと楽でしょう。

ジアゼパム基準量 5[mg] / 基準量に対する特定 BZ 系薬物の等価換算値 [mg]

とすると、例えばフルニトラゼパムのジアゼパム換算係数は

5/1=5

となり、フルニトラゼパム 2mg をジアゼパム換算したいときは、これらを掛けあわせて

5 x 2 [mg] = 10[mg]

となります。これで、フルニトラゼパム 2mg はおおよそジアゼパム 10mg に相当すると大雑把に見積もることができます。フルニトラゼパムはけっこう「強い」薬ですね(そのためかアメリカでは使用禁止になっています。この薬を服用している方で、アメリカに出かけられる患者さんは注意が必要です)。
こういった把握・理解の仕方は処方を決めるときにも役に立ちます。薬剤師さんにもできれば理解しておいてほしい事柄です。
ただし、同じベンゾ系とはいえ異なる薬剤を一つの数値で代表させるわけですから、限界もあります。例えば、「作用時間」は考慮されていません。おなじみの「短時間型」・「中時間型」・「長時間型」という区分も整理して覚えておくといいかと思います。

 

猪股弘明 フェイザー合同会社

医師(精神科 精神保健指定医)

昆布のうまみ成分の放出を抑えるラミクタール(ラモトリギン)

先日、食欲が出なくなり、外出困難になった患者様Aさん(50代、女性)に在宅を頼まれました。Aさんは往診で新しいお薬ラミクタール(ラモトリギン)が処方されました。

(私)新しいお薬が追加されました。

(Aさん)どういうお薬ですか?

(私)気分の変動を落ち着かせるお薬です。脳で興奮を引き起こすグルタミン酸の放出を抑えます。

(Aさん)グルタミン酸って化学調味料の?

(私)昆布のうまみ成分であるグルタミン酸です。日本人の池田菊苗が見つけたことで有名ですよね。グルタミン酸はアミノ酸をつくる重要な栄養成分であると同時に重要な脳の興奮性神経伝達物質なのです。このお薬は脳でグルタミン酸の放出を抑えることにより、神経の余計な興奮を抑える働きをします。

(Aさん)グルタミン酸を出さないようにする薬なのですね。しかし、うまみ成分が興奮物質とはおもしろいですね。では、昆布を食べ過ぎたり化学調味料を使いすぎると興奮しやすくなるのですか?一時期、中華料理店症候群といって、グルタミン酸を食べ過ぎると頭痛がするなど問題になったことがありましたが。

(私)中華料理店症候群は、現在では否定されています。そもそも食事から摂取したグルタミン酸は脳には入りません。脳に入るには、血液脳関門という関所のようなものがあるのですが、グルタミン酸は脳への出入りを許可されていないのです。ですから、食事からいくら摂取しても脳にはいかないとされています。脳で使われるグルタミン酸は脳でつくられるのです。例えば脳の関所(血液脳関門)を通ることのできるグルタミンから生成されたりします(引用文献)。

(Aさん)食事からとったグルタミン酸が脳で使われることはないのですね。新しい薬を飲むときは、不安で少し怖いのですが、薬のことがわかると安心してのむことができます。

上記の記載は経験に基づくもので患者様は架空の人物です。

 

せん妄について聞かれました

元アルコール依存症患者の在宅患者Aさんは、毎日ワインを1瓶空けていましたが、徐々にお酒を減らし、今は断酒状態が続いています。

(Aさん)アルコール依存症の人がいきなりアルコールを絶ってはいけないのですか?

(私)急な断酒はせん妄を惹き起こすことがあります。

(Aさん)せん妄ってなんですか?

(私)映画「ルパン三世 カリオストロの城」でルパンが銃で撃たれて深い傷を負った後、一時的に記憶が混乱した場面をご存知ですか?このように大きい手術のあとや入院などの環境の変化でせん妄が起こることが知られています。せん妄とは全身状態の悪化や薬剤などで誘発される軽度の意識障害です。せん妄は幻視、妄想も起こります。幻聴はまれです。
また、いわゆる柳原病院事件(乳がん手術直後に主治医が患者にわいせつ行為をしたとされる事件)も術後せん妄が原因とみなされています。詳しくは『せん妄とか幻覚とか』をご参照ください。

(Aさん)なるほど。手術や入院などの環境の変化でおこるのですね。

(私)せん妄の治療は、環境調整(日中はカーテンを開けて昼夜の区別をつける、入院中は家人につきそってもらうなど)、せん妄を引き起こしやすい薬剤の整理、栄養や貧血などの全身状態の改善をはかることが第一であり、そのうえでお薬を使用すると報告されています。

(Aさん)お薬はどんなものを使うのですか?

(私)治験で有効性が示されているのは抗精神病薬です。2011年までせん妄の適応をもつ薬がなかったのですが、クエチアピン(セロクエル)、ハロペリドール(セレネース)、ペロスピロン(ルーラン)、リスペリドン(リスパダール)が保険適用になりました。ただし、アルコール依存症の方が入院して断酒した時に起こるせん妄(アルコール離脱せん妄)はベンゾジアゼピン系のジアゼパム(セルシン)、ロラゼパム(ワイパックス)を使用するそうです。(アルコールとベンゾジアゼピンの相互作用についてはこちら

(Aさん)せん妄一般とアルコール離脱せん妄は服用する薬がちがうのですね。

引用文献:臨床医学知識、大八木秀和、じほう